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2月 01

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会員の広場(2024.2)


短歌

再びの命給ひし初春の
山に向ひて命数へり (本田 征子)

底冷えの飛騨高山の朝市の
媼(おうな)のやさしき声思い出す (小西 和子)

投稿川柳

振り向いた母に似た人旅の人
鉛筆の先がひらめく夜明け前 (田村 ノブ子)

人間になりきらないで今日も生き
何時の日も心に花の心地よさ (浜 正吉)

投稿五行歌

美しきピアノの音色
車走らせ一人聞く
心のやすらぎ
青い空白い雪
しばし喧騒忘れる (ひろ)

悲しみと辛さを
目のあたりにした地震
雪は深々と降る
身体も心も凍てつく
まけないで! (みかん)

エッセイ

薄氷

藍染が得意な友人から、ランチョンマットより一回り大きなサイズの布を頂いた。早速、下駄箱の上に布を広げる。藍染めの地に所々白く抜かれた布の上に、我が家の裏の奥さんから頂いた栗と栗のいがを置く。

<う~ん、何か寂しいな。そうだ、庭のほおずき置いてみよう。>我が家のほおずきを横たえる。 <これでよし> 私は、一人頷いた。この光景に私は、小学校の頃を思い出した。

私の家は、北海道の小樽に程近い小さな田舎町だ。家の裏には、大きな栗の木があった。
当時の北海道では、栗の実が落ちる頃に雪が降るのも、珍しいことではなかった。そして、栗の葉の上に薄氷が張って、その上を赤い長靴でパリッと割って栗を拾った。

「氷、ふんだらドロドロになるぞ。あ~あやっぱり、せっかく買ったばかりの長靴がー」と父が笑いながら言う。

私はと言うと、父の言葉も何のその、薄く張った氷の上に足を乗せる。パリッと音がして長靴がずぼっと入る。なんと楽しい遊びだったことか。
秋の風が吹いて窓を叩く頃、栗が思い出させた秋の光景。 そんな父ももういない。 (田中 美智子)

俳句

佇みて川見る人や日脚ぶ
早春の海鳥浮かぶ運河かな (川口 昭治)

雑煮鍋匂いたちつつつまみ食い
初もうで行き交う人のよき笑顔 (渡辺 セツ子)

五行歌の会

府の良識
底がぬけたア!
一強の傲慢と悪辣
止まれ!
この罪、我に有り (西村 芳光)

友の幸せ
末広がりで
ありますように
祈る正月
わたしもね (三村 ツル)

エッセイ

足立美術館・車イス旅行者への提案

私は、現役の旅行添乗員です。

あるツアーで「私は介護の資格を持っており、雪まつりの時に車イスを利用する方の介助ボランティアをやっています」と言った事がきっかけで、そのツアーに参加していた訪問看護師さんに声を掛けられました。その方は「先程のお話しをお聴きし是非相談に乗って欲しい事があるのですが・・・」と。その方の利用者さんで在宅医療に入所している方(車イスの高齢女性)が島根県の足立美術館に行きたいと言っており、別居しているお嬢さんとの二人旅を考えている様ですが、お嬢さんも旅行中一人での車イス介助に不安があり、思案に暮れている、と母娘の希望に対してその方自身も悩んでいた経緯を私にしてくれたのです。

早速、お母さんとお嬢さんにお会いする機会を設けて頂き、お身体の状態や旅行に関しての希望をお聴きすることにしました。傾聴するには、前もって当方の経験則から足立美術館周辺の他の観光地、バリアフリーのホテル、また移動する際の観光タクシーの利用などの情報を提供しながら、お母さんの行動範囲や介助の条件などを確認する事にしました。お嬢さんの負担も考慮し、同行する介助ヘルパーも女性が良いと思われます、とのアドバイスも付け加えた事は言うまでもありません。数日後、希望を叶える為の2泊3日の旅行プランと見積もりを提示した処、承諾を頂くことが出来、後日女性の同行ヘルパーを連れての訪問となりました。

日程も決まり、いよいよ出発です。旅行は事前の準備が全てと言っても過言ではありませんが、当日のお天気や道路事情などで予想しなかったこともあるかも知れません。

経験、体験の全ての出来事が旅行なのですが、ラインホールドの祈りの言葉で『神よ、願わくば私に変えることの出来ない物事を受け入れる落ち着きと、考えることの出来る物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵を授けたまえ』と言う言葉を思い出します。

誰かの助けを借りられるなら出来ることは増えていきます。出来ない時には、出来る誰かを探すことです。諦めないで行動して欲しいと思った、今回の出来事でした。 (森川 勝彦)

絵手紙教室


江崎 弘子

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