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12月 01

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会員の広場(2022.12)


川柳

樟脳の母の思い出色あせず
 待つ人へドクターヘリの響く空 (田村ノブ子)

老い先を時間の旅に委ねます
 ほどいたり編んだりしての現在地 (浜 正吉)


短歌

風のように友は逝ってしまいたり
 思い出だけを我に残して (小西 和子

命日の白き百合の香(か)り満々て
 笑みて語らふ遺影の夫(ヒト)と (本田 征子)


投稿五行歌

おもいきり
 諸々の物捨てた
車は二台
 去っていく一瞬
人生はこんなもんかも (澤田 節子)

私のクロニクル
 なにも変えられず
なにも戻れず
 ただ貴女に
知ってほしくて・・(ひろ)


エッセイ

梅の蕾の思い出

あれは、東日本大震災から3年後のことだった。桜が咲く4月。私は、友人達10人と花巻から遠野、釜石、そして田野畑へと旅をした。マイクロバスを借り、運転手を頼んでの個人旅行だった。

遠野から釜石へバスは進む。釜石、何も無かった。本当に何も。ただ赤茶色の地面が続いて津波の爪痕を残していた。

そして、バスは田野畑町営ホテル羅賀荘に着いた。3階建てのこのホテルは、1階と2階は、津波に浸かったものの津波に流されずに残り、何とか営業再開に漕ぎ着けた。

夕食後、このホテルのロビーで、チャリティー『復興支援コンサート』を町民を招いて開いた。札幌から、震災後にボランティア活動をしているプロのクラシック音楽家【アンサンブルグループ奏楽】の演奏家達と一緒に小説「梅の蕾」を朗読した。その小説の舞台のその場所で。私の声が感激で詰まりそうになった。

その時、ロビーに集まった人の中から、すすり泣きの声が聞こえた。私の朗読が上手かったからではない。実話に基づいた話だったので当時を思い出した人や親から聞いていた人々が泣き出したのだ。少しギャラを貰えるようになった今と違って以前の揃い朗読が、人の心に届いたのを実感した瞬間だった。そして、その朗読はその後の私の朗読を変えた。そんな瞬間が、私の人生の中にあったことは私の宝物になった。 (田中 美智子)


俳句

極月や片眼覆はる手術台
 小春日や森の透けゆく切り通し (川口 昭治)

五行歌の会

今まで
 ありがとう
世話になったね
 カズワンの男性
あれから早、半年 (西村 芳光)

初体験も楽し
 寒風の中
人々の
 優しさ温かさ
募金箱の重み (山崎 礼子)


エッセイ

「粉雪(こゆき)ふる」

多くの人々がそうであったように新型コロナウイルス感染拡大のため、私も生活習慣の一部を変更せざるを得なかった。毛染めを止めたこともその一つだ。感染予防のため美容室での滞在時間を短縮したかったのだ。他愛も無いことだけれど、私にはちょっぴり勇気のいる決心だった。その決心が功を奏したのだろうか。数ヶ月後には、拍子抜けするほどあっけなくショートのグレイヘアとなった。

「おばぁちゃんより白いね」と母が言う。
「おじいちゃんとそっくりだね」と姪が言う。
「まさこちゃんなの?わからなかったわ~」すれ違った隣のおばぁちゃんが言う。

真夏日となったその日、美容室で髪をカットしてもらった。てるてる坊主みたいなカバーを着せられて俯いていると、ハラハラと白髪が降って来た。いつも見ている散髪の風景なのに、その日は次から次と私の膝に粉雪が降り積もるように降って来たのだ。一夜にして白一色の世界に変わってゆく冬景色を見たような気がして、心のどこかで秘かに否定していた白髪を美しいのものだと思えた。今月も美容室へ行日が近づいている。白髪は降るだろうか。初冬の景色は見えるだろうか。

『白髪ふる粉雪ふるふる散髪屋』 (森 真佐子)


絵手紙教室


大西 孝子

お花


第59回全道いけ花美術展
2022年10月12日~17日開催
丸井今井札幌本店 大通館9階
シーズネットサークル「楽しいお花」代表横山慶香さん華道専正池坊「中期」の作品です。
花は活ける人の想いが観る人の心のどこかにそっと寄り添ってくれます。

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