NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人
先日、「新老人の会」北海道支部が主催した「日野原重明先生を讃え、感謝するひととき」に招かれて、恐れ多くも日野原先生への哀悼の辞を述べる機会をいただきました。なぜ、私がというと、新老人の会北海道支部が「シーズネットというところは、日野原先生がずっと語っていたシニア世代が活き活きと活躍する大切さを実践している団体らしい」と感じていたそうで、「日野原先生の教えを実践している団体の代表から想いを語ってほしい」という運びになったわけです。
新老人の会は、日野原先生が提唱した新しい老人の生き方に賛同者が集まって発足したのが2000年9月、おりしも急速な高齢化の波が押し寄せ介護保険制度がスタートした年です。新老人の会の「高齢になっても自立して、これまでの人生で培った知恵や経験を社会に還元できる老人」を目指した活動は、まさにシーズネットの創設者である岩見太市前理事長が掲げた「豊かなシニアライフ」に通じるものがあります。シーズネットの設立が2001年7月ですから、同時代に同じ問題意識を持っていたのですね。
私は哀悼の辞に日野原先生が繰り返し述べていた「ペイフォワード」という言葉を用い、「シーズネットはペイフォワードという気持ちを大切にこれからも活動していきたい」と述べました。ペイフォワードを直訳すると「未来に支払う」という意味でしょうが、ある人物から受けた親切を、また別の人物への新しい親切でつないでいくことを意味する英語です。この表現は、日本では2000年にアメリカで製作された「ペイフォワード」という映画で広められました。そのあらすじは、中学1年生の主人公が先生から「もし自分の手で世界を変えたいと思ったら、何をする?」という課題を与えられて「自分が受けた善意や思いやりを、その相手に返すのではなく、別の3人に渡す」ということを考え実践する物語です。
つまりペイフォワードとは、日本語では「恩送り(誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、別の人に送ること)」ともいえますし、「情けは人のためならず」ということわざとも通底します。
シーズネットの活動を振り返ると、自分のためであることはもちろんですが、人のためにもなっているという意識が大きいのではないかと思っています。そうでなければ16年も続けていられないと思うし、こんな大所帯にもなっていないと思います。シーズネットに参加している会員の皆さんは、きっと心のどこかで、自分が前向きに活動していることが、誰かの役に立っていると感じているのではないでしょうか。
11月には傾聴ボランティアの養成研修も行いますが、さらにこれからは、もっと人の役に立つことを実感できる活動を作り上げていこうと企画しております。会員の皆様の「ペイフォワード」に期待します。