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10月 21

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「セルフ・ネグレクト」を考える(下)

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NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人

今回も引き続き「セルフ・ネグレクト(自己放任)」について考えたいと思います。

私のケアマネジャー等の経験から言えることですが、セルフ・ネグレクトに陥る方は「自分一人で生きていけるから、あんた方が心配するのは余計なお世話だ」と必要なサービスを拒否することがほとんどです。「自分一人で生きていく」という決断そのものはなんら批判されるべきことではなく、むしろその自立心は評価されてもよいでしょう。

問題は、そのことで人間らしい文化的な生活を営めているのか、ということです。閉じこもったままの生活は不衛生な環境に陥りやすく近所迷惑になることも多いですし、健康を害したままの生活では必ずいつかは誰かの助けが必要になりますが、必要な医療・福祉サービスを拒否しているから大半が手遅れとなり重篤な状態になって初めて関わることになります。あるいは孤立死につながることも少なくありません。要するにSOSを発することができない方々が多いのです。

では、そのような方々へどのように関わればよいのでしょうか。今、そのような状況に陥っている方への関わりは、やはり専門職につなぐしかありません。

役所の担当課あるいは地域包括支援センターが窓口となります。地区の民生委員に相談してもいいでしょう。

私どものできることは、そうならないための予防です。岩見太市さんは著書「地域家族の時代」(平成24年・CLC出版)の中で、「人はみな、人と人とのつながりの中で生きています。子育てが終わり、仕事を退職した高齢期、地域の中でお互いの存在を意識しあい、話し相手となったりお互いの弱みを見せあえるようになると、お互い支え合える関係がつくられていきます」と述べています。「お互いの弱みを見せあえる」というのはなかなかに難しいことで、特に男性は苦手なことと思います。しかし、日頃から愚痴を言い合える友人・知人がいるだけで、人間関係は豊かになります。

シーズネットは「仲間づくり」「居場所づくり」を実践する中で、会員間でそのような関係を形成してきました。そして「役割づくり」の一環として、孤立防止ネットワークセンターを設置し、市民の皆さんに啓発活動を続けています。その活動の一つとして12月2日には団地サミット(団地での支え合い活動の発表・交流の場)を行います(詳しくは次号で)。

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