
NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人
先日、WEBの新聞ニュースで「なるほどなあ」と思う興味深い研究結果が紹介されていました。それは、配偶者との死別が高齢者の健康に与える影響には、大きな男女差があるというものです。
千葉大学などの研究によると、配偶者を亡くした男性は、死別から3~4年後の死亡リスクが1.9倍に上昇していました。また、認知症になるリスクは4~6年後に2.3倍、要介護認定を受けるリスクは2.9倍に増加していました。メンタルヘルス面でも、男性は死別から1年以内に抑うつや絶望感が高まる傾向が見られました。
一方、女性では死亡リスクとの明確な関連は見られず、それどころか3~4年後には生きがいが1.3倍、生活満足度が1.1倍に高まる結果が示されました。趣味やスポーツなどへの社会参加は男女ともに増加しますが、とくに女性でその傾向が顕著だったそうです。この研究から、配偶者との死別が及ぼす影響は男女で大きく異なることがわかります。
この結果については、「そうだよなあ」という納得しかありません。今のシニア世代の男性の多くは、高度経済成長期の日本で働くことに生きがいを感じ、会社のために身を粉にして働いてきた人たちです。昭和は「男は働いて女は家を守る」という習慣が世にはびこっていた時代でもありました。
その頃の「私つくる人、僕食べる人」というテレビCM(1975年ハウス食品)は、まさに男性は仕事、女性は家事という当時の性別役割分担を端的に表現したものでした。女性団体の抗議により2ヶ月で中止されたものの、相当なインパクトを残したCMです。
つまり、今のシニア男性は仕事中心の生活を送ってきた人が多く、家事や地域とのつながりを担ってきた妻が亡くなると、精神的な支えだけでなく、日々の暮らしを支える存在も同時に失うことになるのです。
私のケアマネジャーとしての経験からも、この現実はよくわかります。配偶者を亡くした男性が、食事をコンビニ弁当やカップ麺ですまし、掃除や洗濯もあまりせずに引きこもりがちになる姿をたくさん見てきました。一方、配偶者を亡くした女性はおおむね活き活きと暮らして、今までできなかった趣味や社会活動に積極的に参加しているようです。
ここに、シーズネットの出番があるかと思います。配偶者の有無に関わらず、他者と交わる場所に出かける機会を提供すること(居場所づくり)、他者と共通な趣味や活動を楽しむ機会を生みだすこと(仲間づくり)、他者のために何かをしてあげること(役割づくり)は、孤立しがちなシニアにはとても有効な処方箋ではないでしょうか。
余談ですが、シーズネットのサークル担当である笠谷さんは、先ほどのCMを引用して「サークル活動は、私運営する人、僕参加する人、では続かない。みんなが参加するだけでなく運営側にも回らないとダメなんだ」といつも言っていました。そのとおりだと思い、一昨年にサークル活動に「世話人」という制度を設けた次第です。
シーズネットでは、これからもシニアの皆さんが社会とつながり、自分らしく活躍できる機会を提供していきたいと考えています。しかし、それは事務局だけで実現できるものではありません。会員の皆さんが参加者としてだけでなく、ときには運営や支援の担い手として力を貸してくださることで、より豊かな活動が生まれることを期待します。


