«

»

3月 01

Print this 投稿

老後はサスペンス!

NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人

過日、広報担当の笠谷さんから、「会員さんからこんな本送られて来たんだよね。面白かったので奥田さんにも紹介するわ」と一冊の本を渡されました。「老後のサスペンス」という、タイトルだけでも興味のそそりそうな本だったのでありがたく拝読させていただきました。タイトルの印象から、「サスペンス仕立てのドラマチックなフィクションなのかなあ」と先入観を持って読みましたが、いやこれが期待を上回る面白さですっかり引き込まれました。

内容はフィクションではなく、看護職の著者が病院・介護施設・訪問看護などの現場で経験したたくさんの利用者さん(時には著者ご本人のことも)が直面しているそれぞれの生活上のハプニングや赤裸々な生きざまをコラム的なショートストーリーで埋め尽くしたノンフィクションで、タイトルだけでも「ガス検針員はみた」「コレはオレの彼女だ」「大人の恋のゆくえ」「遺骨のゆくえ」など、私自身ケアマネジャーの現役であるだけに「あるある」と、とても共感して読了しました。そのショートストーリーで登場する人物のそれぞれに様々な生い立ちがあり、その苦労を共感しつつ一貫して温かい目で語っており、行間から利用者さんの一人一人に寄り添ってきたことが感じ取られ、読んでいる私にもほっこりする気持ちが生まれてきました。

著者は、山下明美さんといって、シーズネットの会員です。山下さんは、准看護師として函館や札幌の病院などで働き、55歳から介護の現場でお年寄りと接してきました。介護の現場では、その方の生きる力をつぶさに観察し、老後には若い時には思いもよらなかった様々な出来事があり、まるで老後はサスペンスだなあと感じたそうで、それがこの本の表題になっています。69歳に道新文化センターの「一道塾」(ノンフィクション作家の合田一道先生の文章講座)に通い、文章力を磨き、体験談をもとに作品を書き溜めていたそうです。ご自身も脳梗塞を発症しリハビリを頑張りながら、その作品群をまとめ2021年に上梓したのです。

「一人一人の生き方に触れ『老後は余生じゃない。前向きに生きよう』と思えるようになった」(道新「まど」欄2021年10月26日に紹介された記事より引用)そうで、まさにシーズネットの目指している生き方とも思えました。

私自身とはまったく接点のない会員の方ですが、いろいろな会員が様々にご活躍していることをとても嬉しく思いましたので、ご紹介させていただきました。なお、書籍の問い合わせはサッポロ堂書店011-522-8024(火~土の午後1時から5時)です。

この本の「アルコール依存症②」のエッセイの結びに書かれている「自己責任と言って放っておくのは簡単だが、最後の砦は必要だ」という言葉に大いに胸を打たれました。社会正義の神髄がここにあります。

Permanent link to this article: http://www.seedsnet.gr.jp/2023/03/%e8%80%81%e5%be%8c%e3%81%af%e3%82%b5%e3%82%b9%e3%83%9a%e3%83%b3%e3%82%b9/