彩りどりに傘の行き交ふ
手の平に落ちて来そうな満月を
受けて今宵は眠りに落ちむ (本田 征子)
老境の極意のひとつ愚痴の泡
句読点老いを迎える一里塚 (浜 正吉)
楽しみも忙し過ぎてつんのめり
風の有無ナナカマドの葉良い天気
ちょい悪シルバーこれでうまく行く (ホヤ レイ)
秋惜しむ並木のかげの保育園(川口 昭治)
夜空いっぱい
輝く星
忘れていた
本当の空 (菊地 佐和子)
自分が
体験して
言葉の意味が
よくわかる
目の前の出来事 (菅 妙子)
あぁ 様変わり
自宅に何か配送して欲しい時、…区…条…丁目…番地と住所を書くと、最近「これだけですか?枝番とか何か他に番号付きませんか?」とちょくちょく聞かれます。ここ数年、近所にマンションが随分建ちましたからこう質問されるのでしょうか。 住人の高齢化や都市計画が進み、ご近所の魚屋、お菓子屋、銭湯、ペンキ屋、そろばん塾はスーパー、コンビニ、地下鉄駅、駐車場などに変わりました。昔は、ご近所さんどうし皆顔見知りで、飼っている犬や猫のことまで知っていたものでしたが、今では、そういう事は全然無くなりました。ご近所さんはただ道ですれ違うだけの人で、言葉を交わす気は薄れて行く一方といった感じです。でも、そんな中、ご近所同士の温かい繋がりを感じる事がありました。
フェレットをご存知ですか?イタチ科の動物で、マンションで飼いやすく人気のペットだそうです。 最近、このフェレットが我が家の玄関先に出没し、イタチが出た!とびっくり。「ちゃんと帰るんだよ」と言ってやりたくなりました。オカメインコ探しを手伝ったこともあります。このインコは、裏のマンションの11階からいなくなりました。無事飼い主のもとに戻れたか何日も気になりました。又、朝夕にはソックスをはき、洋服を着た小型犬がご主人様と散歩するのをよく見かけます。どんなお宅に暮らすペットたちなのでしょう。 (キョウコ)
「番台に座ったさくら湯の想い出」後篇
また、入浴後に料金を払うお客さんも居ました。そんなお客さんは始めから無銭入浴を試みていて、以前にもやられた事があったので、そう云うお客さんは覚えていて、来ると前金でお願いしますと云いました。その後は云われなくとも払うようになりました。
そのうち、私の妹も番台に座る様になり、覗き見のお客さんの話をするようになりました。何人かそう云う人がいたのです。男湯、女湯とも玄関は別々です。それも、番台を真ん中にしているのですが、男性が入ってくるとお金を払う時にお金を置く所は決まっているのですが、目は完全に女湯をチラとみるのです。そういうお客さんは私と妹の間ではマークしていました。丁度玄関横に古いトイレがあり、高いところに小さな窓がありました。
そこから女湯の脱衣所が見え、ガラス窓の多かった女湯は結構見えるのです。カーテンもあり、トイレの窓も高いところで見えにくかったと思いますが、覗きたい一心で見てたんでしょうね。家の使用人に見つかり顔も見られ、おまけに履物を片方おいて逃げ帰りました。その男性は村でも助兵衛で通っていました。
大相撲の一行が入浴した事も遠い思い出です。横綱千代の山、栃錦関が入浴したときなどは、関取の方達は砂だらけで来るので、皆さん帰った後は男湯はお湯を入れ替えて一般のお客さんは5時からにしました。
風呂屋のイベントの様なもので、春の子供の節句に2日間の菖蒲湯もありました。それは5月ではなく6月です。5月は菖蒲がまだ育っていないのです。家族で朝4時から起きて3キロ程の湿地帯でリヤカーに山の様に積んで来た菖蒲を家に帰り、今度はそれを蓬と一緒に腕くらいの太さの束にして湯船に入れたり、子供はバラバラに浮いている菖蒲を吹いて鳴らして遊んでおりました。
島で鰊が獲れた頃、最盛期はヤン衆と呼ばれるニシン漁の季節労働者の人たちが大勢3月末頃から4月迄いました。海が荒れて漁に出られない時には団体でやってきます。そういう時は履物の間違いが多いので父か母が番台の側にいてくれます。そのヤン衆の多くは東北の出身が多く、慣れると、自分たちが持ってきたりんごや南部せんべいを持って来て訛りの強い東北弁で食べろと云ってくれたりしました。
また、お正月は2日、3日と朝湯があり、お風呂が好きな方達には喜ばれたものです。村に一軒しかない風呂屋だったので、村の人にもお世話になったり、お世話をしてあげたり、まだまだ沢山の想い出がいろいろありますが、とに角、番台に座ったお陰で引っ込み思案の性格も治り無事中学生3年間を終える事が出来ました。私の妹たちも同じ様に番台に座ったので、集まると昔の想い出話に花が咲きます。 (福栄 真理子)

(大西 考子)