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4月 27

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映画の醍醐味

NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人

私は、若い頃は映画が好きで、そのころ流行った映画はそれなりに観ているつもりですが、子育ての頃から映画を観に行く機会がとんと無くなりました。共働きで、土曜日はまだ半ドンで日曜日は買い物と掃除という毎日でしたので、自然と映画館からは遠ざかったままでした。不思議なことに少し余裕ができても、映画館に行こうという気があまりなくなってきました。TVで近作を放映することが多くなったり、レンタルビデオが普及してきたせいかもしれません。それでも、映画館で観る迫力と感動は圧倒的に違いますね。近頃はたまに映画館での映画を楽しんでいます。

先日は「北の桜守」という吉永小百合主演の話題作を観てきました。この映画は、劇中劇(映画中劇?)を取り入れたちょっと斬新な映画でしたが、ストーリーはわかりやすく、戦時中の樺太で夫と2人の子どもと幸せに暮らしていた主人公(吉永小百合)は樺太で初めての桜栽培に成功しますが、ロシア軍の突然の参戦に夫と別れ2人の子どもを連れて北海道へ逃避行し(引揚船が攻撃されて長男は死亡)、その後、北海道の網走付近で辛苦の生活を送りながら次男(堺雅人)を育て、次男は巣立ち、70年代に札幌にアメリカ資本のファストフードの店の経営者として帰ってくるという流れです。帰ってきた次男は、網走に一人でいる母親(吉永)を札幌に引きとるがうまく馴染めず、やがて失踪して次男と関係者が探し、桜を育てる樹園で母親を発見、再会するところでエンディングとなります。「桜守」というタイトルが通底してドラマを彩ります。

考えさせられるところが多かった映画です。ソ連の参戦と三船殉難事件、引揚者の困窮の生活という戦後史の他にも、老いた母を都会に引き取ることとその後の母の騒動(映画では認知症とはなっていませんが、リロケーションダメージ(注)が相当あるように描かれています)や、食べ物を粗末にできない母と賞味期限の切れたおにぎり(売り物)を捨てる次男など、今に通じるいろいろな問題が凝縮されていました。

面白かったのは細部の表現で、昔の札幌駅や狸小路の風景、汽車の座席や札幌駅のプラットホームの階段など、札幌で育った私としては、そちらが懐かしくて魅入っていました。あの頃に帰れるんですねえ。こんな面も映画の醍醐味ですね。

シーズネットは、厚別区のもみじ台で「なないろシネマサロン」を月1回開催協力していて、昔の名作映画を上映しています。土肥さんという映画関係者の解説付き(絶品!)というぜいたくな催しです。機会があれば是非ご参加ください。近日は5月5日に「風と共に去りぬ(後編)」を上映予定です(13:00~16:00 もみじ台管理センター大ホール、入場料300円)。

「いやあ、映画って本当にいいもんですねえ」

(注)リロケーションダメージとは、移り住むことで生活環境がかわりストレスが強くなることをいいます。

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