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9月 30

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地方創生2.0

NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人

あっというまに舞台から消え去ろうとしている石破首相ですが、様々な政治、経済、社会上の課題解決を掲げていたわりにはあまり成果がないままに短命で終わることとなったなあ、という印象があります。その石破首相が結構力を入れていたのが「地方創生2.0」という政策です(2.0とは概念も含めてバージョンアップしたというイメージを表現する言葉です)。はじめの「地方創生」(つまり1.0)とは、2014年に人口減少、少子高齢化、東京一極集中という社会課題に対し、国家戦略を明確にして取り組もうと始まり、石破さんは初代の地方創生担当大臣でしたが、あまり成果を上げられないままでした。地方創生(1.0)では、その政策に沿った施策を取り組む自治体に地方創生推進交付金を与える仕組みでしたが、自治体の計画づくりはコンサルに頼らざるを得なく、その結果、金太郎飴みたいにどの市町村も同じようなポンチ絵(行政や企業などが会議で説明する図表やイラストを多用した資料)ができるわけで、あまり実効性がなかったという反省があったようです。

そこで、2019年に「地方創生2.0」が掲げられ、石破さんが首相になった2024年に改めて主要政策として「令和の日本列島改造」という勇ましいスローガンを掲げ、2.0を強く推進することになったという経緯があります。

その地方創生2.0は、①地方自治体が主体的に計画を立てられるよう国と地方がより密に連携する、②地方の課題を解決するためにAIなどのデジタル技術を積極的に導入する、③「定住人口」だけでなく地域に継続的に関わる「関係人口」を増やし地域活性化につなげる、というのがポイントです。まあ、どれも難しい課題ですが、地方創生2.0には「地方の人口減少を食い止める」のではなく「地方の人口が減少することを前提に持続可能な地域社会をどう構築するか」という考え方の転換があります。そして、2.0では、地域のことを熟知している「産官学金労言」(さんかんがくきんろうげん=産業界、行政、教育界、金融界、労働組合、言論界(マスコミなど)の略)、つまり地域のあらゆる関係者との協働で地域創生を考えるというスタンスが求められています。

さて、私がなんで地方創生に言及するかというと、地域のあらゆる関係者の中にはNPO団体が大きな位置を占めるのではないかと考えるからです。実際にほとんどのNPO団体が地域活性化に取り組んでいますし(シーズネットの活動もそうですよ)、地域の困りごとを解決するNPO団体も多数存在します。また、NPO団体は若者や女性の参画が多く、「楽しい地方」を作ろうと頑張っています。また、地域おこし協力隊の方々でその任務を終えた後もNPO団体を設立して地域の課題解決に取り組んでいる例も多数あります。

さて、地域おこし協力隊と言えば、札幌市も初の隊員を採用しました。報道では札幌市の魅力発信や移住促進にあたるそうです。大都市でも地域おこし協力隊制度の対象となるのか疑問でしたが、調べてみると人口減少などがある場合は対象になるようです。つまり、札幌市も地方創生待ったなしなんですね。我々、NPO団体の活動も一層期待されると思っています。

ところで、石破さんの後ってどうなるんでしょう? 国民は蚊帳の外ですが……

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