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12月 30

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丸く生きる

NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人

新年を迎え、また歳を取りますね。歳を重ねても、新しい年には「今年こそは〇〇をやってみよう」と、思い描く人が多いのではないかと思います。私もいくつかの決意を新たにしますが、年末に振り返ると、やはり難易度の高い目標はだいたいが実現していません。とはいえ、チャレンジする気概は持ちたいものです。なにせ、来る年の干支の午(うま)は勢いや発展を象徴する干支らしく、新しいことにチャレンジする格好の年だそうですから。

さて、「歳をとると頑固になる」という説と、「歳をとると丸くなる」という説はよく聞くところです。まったく正反対の傾向をさしているのですが、果たしてどちらが正解だと思いますか?実はどちらもあてはまるようです。

心理学的な研究では、「頑固になる」というのは、加齢とともに認知機能の柔軟性がゆるやかに低下して新しいことを受け入れにくくなり、今まで身につけた行動様式を変えたくなくなる、というのが、はたから見て頑固に見えるそうです。何事につけても新しいやり方が次々と出てくるのは社会の進歩ではありますが、これまでのやり方に慣れていると、新しい変化を受け入れにくいことがあります。

一方、「丸くなる」というのは、人生経験を積む中で人間関係のトラブルを避ける方法を身に着け、一歩下がって無駄な争いを回避する知恵がついてくるからのようです。また、子育てや仕事のプレッシャーもなくなることから丸くなるともいわれています。

そのように、頑固になることと丸くなることはシニアの皆さんがあわせもっている傾向なのでしょう。

ただ、これからの人生を考えると、丸くなる場面が多くなることを目指したいところです。慣れ親しんできた昭和の価値観はいとおしく良いところもあるのですが、令和の時代に即した価値観を受け入れる「丸さ」も必要だと思います。

その秘訣は、新しいことを受け入れる柔軟性を持つことです。自分の中にある「こだわり」が譲れないこだわりか、生活様式上のさして影響のないこだわりか見直して、譲れないこだわりは堅持しつつも、ちょっと丸く生きることを考えたいものです。

たとえば、コンプライアンスやハラスメントなどひと昔前にはなかった言葉ですが、昭和の頃の好ましくない習慣に意義を申し立てたものと言えるでしょう。ハラスメントだけでも、パワハラ、セクハラ、モラハラ、カスハラ、アカハラ、マタハラなどあり、他にもダイバーシティ、インクルージョン、ジェンダー、クィア、ルッキズム、メンタルヘルス、ワークライフバランスなど、価値観や人権に関する新しい言葉が続々と使われるようになってきています。これらは、より好ましい関係づくりを進める中で生まれてきたものです。そのような新しい行動様式をやんわりと受け入れる柔軟性を持ちたいものです。こういうことへの理解も新年のチャレンジにしたいですね。

なお、文中で多く使用したカタカナ語は、主に英語をそのままカタカナにしたものです。今月から、そのように巷にあふれているカタカナ語やアルファベット文字(ICT、AIなど)を解説するコラムを通信の片隅に新しく設けましたので、そちらもぜひご覧ください。文中で使用した言葉もそのうち解説したいと思います。

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