NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人
この通信が届くころは、年末の大掃除や年越しの準備、今年中に終わらせなければならない様々なことの整理などに大忙しのことと思いますが、改めて”Happy New Year”と伝えます。2025年は皆様にとってどのような年になるでしょうか。
もちろん佳き年になるよう祈りますが、世界では、戦争、内乱、地球温暖化、移民問題などで、協調よりも分断が進んでいるような状況です。日本でも、少子高齢社会の進行の中で、あらゆる産業での人材不足、格差の拡大、物価高、いじめの増大など、私たちが小さい頃に夢見ていた21世紀の素晴らしい未来とはまるで違う社会が目の前にあると感じています。高齢者の暮らしに限って言えば、運転手不足でバス路線が減便・廃止、食料品や公共料金の値上げ、目減りする年金、デジタル対応のややこしさ、はては特殊詐欺の横行など、どうも来たる新年が佳き年になるような雰囲気が感じられません。
私たちがいずれお世話になるであろう(すでに利用されている方もいらっしゃるかと思いますが)介護保険も危機的状況を迎えています。私は、ケアマネとしても働いておりますので、現在の介護保険の状況はおおむね理解しておりますが、肝心のシニアの皆さんは、保険料を支払っているから自分が介護が必要になった時には安心して介護を受けられると思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ介護が必要になった時には、もしかすると望むべきサービスは受けられないかもしれません。
介護保険は、2000年に生まれた世界に誇れる社会保障制度ですが、高齢化率の進展と相まって2023年には制度開始の2000年からみて利用者数は4倍、保険料は2.1倍、介護保険給付費は3.8倍にも伸びています。利用者が支払う利用料を除いた給付費の国庫負担(概ね25%)や地方自治体の負担(都道府県・市町村合わせて概ね25%)、保険料(50%)がどんどん増えることに国は危機意識を持っていて、介護報酬(サービス事業者のサービス対価)を低く抑えたいのですが、介護報酬が少なくなると、サービス事業者は人件費を抑制せざるを得なくなり、そのため人材確保が難しくなります。介護報酬は国が3年に一度国が改定し、2024年の改定では全体で1.59%のアップをしました。しかし、同年の全産業の賃上げ率は5%を超えましたので、介護業界は安い賃金という結果になり、ますます介護業界に入職する人が少なくなっています。介護施設などではそれを補うために積極的に外国人人材を活用するようになっています。なにせ、介護福祉士養成校が軒並み廃校している状況ですから。特に、大変なのが訪問介護(ヘルパー)で、介護報酬が引き下げられたのです。事業所を閉めるヘルパーステーションも増えています。ケアマネとしての経験からも、訪問介護は在宅生活を支える最後の砦といえます。しかし、訪問介護はただでさえ安い賃金で若い人のなり手がいなく、平均年齢は各職種の中で最も高い54.4歳で、60歳以上が37.6%という調査結果もあります。私どもが介護が必要になった時に、日常の家事や身体の介護を担ってくれるヘルパーさんを頼もうとしても「派遣できません」と言われるかもしれませんね(一部の地域ではもう現実となっています)。新年早々、暗い話ばかりで恐縮ですが、「ではどうすればよいか」ということは、次号で続きを。