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4月 01

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私らしい生き方

NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人

先月に札幌市の広報担当から連絡があり、人生のエンディングを考える特集を組みたいので、対談形式で参加いただきたいとの依頼がありました。シーズネットのPRになるのならと軽い気持ちで引き受けたのですが、ふたを開けてびっくり、「広報さっぽろ」で6頁にもわたる特集となりました。なにせ100万部超の発行ですからねえ‥‥

その対談のご相手は、「認定NPO法人葬送を考える市民の会」代表理事の澤知里さんでした。以前にもお会いしたことがあり、とても活発な活動をしている団体の代表です。澤さんたちが2012年に出版された「女たちのお葬式」は、終活関係の書籍では隠れたベストセラーともなっており、私も出版された当初に購入し目から鱗の経験をした覚えがあります。当時は「終活」という言葉がはやり始めた頃で(「終活」は2012年の新語・流行語大賞でトップテン入り)、そのような課題に取り組まざるを得ない時代が来るのだなあと思ったものですが、まったくその通りの状況になりました。

今回の対談も、テーマは「私らしい生き方~人生のエンディングまでを考える」というもので、エンディングに向けた備えを札幌市民にアピールしたいという狙いでした。私は、「広報紙に取り上げるには暗いテーマでは」と思っていたのですが、広報担当者は、「札幌市も高齢化が進んで、市民のために備えとして様々な制度なども知らせたいし、それを知ることによってこれからの人生を前向きに生きるようになるきっかけとなれたら良い」という思いを語ってくれました(ちなみに札幌市は令和4年1月で高齢化率が28.0%、後期高齢者率が13.8%です)。

老後を前向きに生きるというのは、まさにシーズネットのミッションである「豊かなシニアライフ」に繋がるものであります。その対談の内容は「広報さっぽろ3月号」を見ていただければと思いますが(札幌市HPに掲載)、紙面の都合であまり掲載されなかった私なりに強調したかったことを述べたいと思います。

エンディングを考える時、財産や終末期の希望などのような備忘録的なものは必須ですが、取り組む意義は、まだ元気なうちに自分の人生の棚卸をしてみようということだと思っています。来し方の人生を振り返る中で、やってみたかったことでまだできていないこととか、今のうちにあの場所に行きたい、あの人に会いたいとかの希望が出てくるのではないでしょうか。それを成し遂げてからあの世に行きたいね、と思うと、そのためにすべきことが出てきます。また、一つのことを成し遂げると次はこれをというようなポジティブな循環が生まれるかもしれません。とはいえ、若い人が夢を抱いてそれに向かって努力するようなイメージではなく、「無理のない範囲で」というわきまえが備わっているのが大きな違いではありますが。そのようなささやかな希望を持って生きること、それが「私らしい生き方」になるのだと思っています。

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