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2月 02

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シニアの就労を考える(1)

NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人

昨年8月から今年の1月にかけて、北海道社会福祉協議会が主催するシニアの就労を支援する「地域向け就業支援セミナー」及び「企業向け高齢者活用セミナー」の講師を全道16箇所で務めました。このようなセミナーが多方面で開催されるようになってきたことに、今の日本の課題である人口減少と少子高齢社会に対しての政策的な方向性を強く認識することができました。そのあたりを2回にわたり解説したいと思います。

人口が減るということは、産業の担い手も少なくなるから経済成長が望めないということになります。実際、建築、介護、接客の現場は有効求人倍率が4倍を超えている状況で、先日のNHK報道ではヘルパーの有効求人倍率はなんと13.1倍ということです。だから、これらの分野では外国人に頼ろうという状況にもなっています。

少子高齢社会では、社会保障(年金、医療、介護など)を負担する世代が減り利用する世代が増えるので、現状の維持が難しくなります。ですから、年金に「マクロ経済スライド」を導入しています。この制度は、負担する現役世代の人口減少と平均余命の伸びによる受給者の増加を見て、年金の支給額を調整するものです(簡単にいうと人口減少と高齢化が続けば徐々に年金額が下がる仕組み)。他にも、医療面では費用のかかる入院を減らす(ベッド数を少なくする)とか、介護面では一定の収入(年金含む)がある方の自己負担を多くするなどの施策が実行されます。

でも財政的にはまだ厳しく、国は一番費用がかかる年金を70歳からの支給としたいのです。おいそれと導入するわけには行きませんから、まずは70歳まで現役で働く仕組みを創ることと、繰り下げ支給の優遇策として70歳から年金をもらえば42%加算、75歳以降なら84%加算というニンジンをぶら下げることとしました。とはいえ、人間いつ死ぬかわからないから繰り下げ支給を選択する人はほとんどいません(現段階で1%です)。

そうした状況から、シニア層の就労を促進しようという流れが出てきているのです。なにせ安倍首相が昨年10月に国会での所信表明演説で「65歳を超えて働きたい。8割の方がそう願っておられます。意欲ある高齢者の皆さんに70歳までの就業機会を確保します。」と大見得を切っていますから、まさに国策といっても過言では有りません。

その宣伝文句が「一億総活躍社会」と「全世代型社会保障」です。言葉としては体裁がいいのですが、「一億総活躍社会」の内容は働けるシニアには働いてもらおうということと、「全世代型社会保障」の内容は今まで高齢者に厚かった社会保障を、若い世代にシフトしたいということになります。その分、シニアの社会保障は厳しくなりそうです。(この項続く)

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