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10月 01

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人生100年時代を迎えて (その3)

NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人

前回の続きです。金融庁の「老後2,000万円足りない」という報告書には、もう一つ「70歳まで働いてほしい」というメッセージが込められていると指摘しましたが、むしろこちらの方が強いメッセージかもしれません。

人生100年時代というのは大げさな表現ではなく、シーズネット会員の平均年齢である75歳の人の平均余命が男性12.2歳、女性15.8歳という推計が出ております(厚労省平成29年簡易生命表)。だからそこまで生きることを予測して老後資金を考える必要があります。健康寿命と照らし合わせると終末期の10年間ぐらいはなんらかの支援や介護が必要な状態になる可能性がありますので、そうなるとやはり年金だけでは賄えそうもありません。

最も有効な解決策が、定年後も働くことです。働いていくばくかの収入を得ることは、投資するよりもずっと確かな収入源です。もちろん、体もきつい労働を求めていないでしょうし、昇進とか昇給とかの動機付けもありませんから、時間も短く休みも多い勤務形態が取れる職種で、小遣い稼ぎ程度の感覚での就労が望ましいでしょう。金融庁の報告書もモデル世帯で月5万円足りなくなると言っていますので、月5万円程度の収入がある仕事という面では見事に符合していますね。

また、65歳を過ぎても働くことを推奨しているのには、老後資金の問題だけではなく、年金改革への布石でもあり、介護予防になるというねらいもあります。

厚労省が8月に発表した年金の健康診断ともいえる「財政検証」では、現役世代の年金受給額(所得代替率)は経済成長が進まない場合には5割を切る見通しで、若者の年金離れ(国民年金保険料を納めない)が危惧されています。そうした状況を防ぐため、年金支給年齢のさらなる引き上げが検討されています。平成の時代に60歳支給から65歳支給になりましたが、早晩70歳支給になるでしょう。65歳からの収入を確保する環境整備として、65歳定年を70歳定年に延長することや65歳以上でも働ける社会づくりを目指しているのです。

また、働くことが介護予防になることは様々なデータで証明されています。高齢者が、働くことによって医療保険や介護保険を利用せず、その上、税金と社会保険料を納めるということは、国にとっては一石二鳥の効果となります。

私は、少子高齢化社会では、やはり65歳を超えても無理のない範囲で働くことが望ましいと思います。ただ、70歳を超えると個人差もありますが、体力的には厳しいことも多いのではないでしょうか。そこで提案したいのが有償ボランティアという関わり方です。社会貢献になり、社会参加にもつながります。シーズネットが始めたボランティアポイントは有償と呼ぶには少額過ぎますが、こういう小さな積み重ねからまた新たな有償ボランティアの仕組みづくりを考えていきたいものです。

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