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1月 01

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会員の広場(2019.1)


短歌勉強会
あざやかな落葉踏みしめどこまでも
 黄泉の国より 母の声聞こゆ (瀧澤 いつき)

見えざるものに動かされて生く人の世か
 夕暮れの路 雪虫の路 (坪川 真紀子)

鏡には八十路を過ぎた吾がいて
 隠す術なし 皺も白髪も (福栄 真紀子)

叱られて親を殺めし少年の
 うすき心を たれが作らむ (中浜 敏明)

料理好きはなく上手の君逝きて
 夕餉の語 無くて六年(むつとせ) (土橋 芳美)

雨あがり友禅模様の落葉踏む
 吐く息白く 冬はそこまで (中山 寿子)

初級川柳教室
香り立つ落葉踏みしめ急ぎ足
 彼岸人心の裡に留めおくや
  頬ついてあの頃事繰っている (伊藤田鶴子)

待つ時間待たせる時間急ぎ足
 日々毎に歩行速度がゆっくりに
  世の流れ人の絆を断ち切って (塚下健太郎)

コンクリの割れ目に咲いて自己主張
 遊びごとちょいと学んで背のびする
  ほほなでる風君からのメッセージ (江崎 弘子)

エッセイ

ながい、ながい二日間

台風21号の爪痕が消えぬうち、一夜おいて襲われたのが胆振東部地震と云う名がついたあの恐ろしい揺れであった。夜も明けぬ3時8分激しい揺れに飛び起きた。揺れていたのは僅か何十秒間なのだが激しかった。居間の食器戸棚からガラスの器が割れ散っていた。ゴム手をして破片を拾っているうちに停電、そう今年の流行語になりそうなブラックアウトである (北海道だけなので話題になっても流行語は無理 ? ) とにかく、私は札幌で災害に備えての用意など考えた事もなかった。

只一つ電池使用のラジオがあった(ラジオのお陰で随分助かった)。そして水が出ない、そうなるとトイレも使えない、ガスは使えた、食料は一人なので困る事はなかったがラジオの電池が心細かったので、人並みに近くのスーパーに30分程並んで電池は買えた。各スーパー、家電量販店は20米以上の人の列、そのスーパーも売るものがない、勿論水などは公園の水道で水を汲んでいる人もいるとラジオで知った。

でもこの真っ暗な夜空で札幌では見ることもできない満天の星月夜が眺めることが出来た。多分地上の灯りがなければ、あの星空は見られるのであろうか、ようやく電気がついたのは、二日目の9月7日午後7時25分。いや~嬉しかった!! 早速テレビのスイッチを入れた。マグニチュード6.7の惨状は凄まじかった。厚真町吉野の集落では山崩れにより住民の半数以上に当たる19名もの貴い命が失われ、安平町、鵜川町の家屋崩壊、北広島、札幌でも清田地区、東区他の家屋倒壊や道路崩落、液状化等により未曽有の災害である。

本当にあの惨状を目にする度に災害に遇われた方達にどんな慰めの言葉があるか、考えたりした。次々とテレビ、新聞の報道は連日、酪農家の方は牛乳を何トンも廃棄したり、物流が停止、私達住民も今回の地震は大いに良い教訓になったと思う。

私も非常袋を作ってみた。水は500ml、膝かけ毛布、食料、冬に向けてはカイロ、湯たんぽ等。でもいざとなったら、やはり避難すべきであろう。行方不明者とならない為にも。とにかく今回の災害に遇われた方達がこの冬に向けて一日も早く暖かな元気な日々を取り戻す事を祈るのみである。 (福栄 真紀子)

 

「ある賭け事」

100枚のカードがあり、それぞれのカードには「あなたの勝ち」か「あなたの負け」と書いてある。その100枚のカードを裏返しておく。任意のカードをひっくり返して、「あなたの勝ち」が出たら、あなたの現在の所持金の半額がもらえる。「あなたの負け」が出たら、あなたの現在の所持金の半額を取られる。ただし100枚のカードは最後まで全部をひっくり返すものとする。

さて、いま「あなたの勝ち」のカードが60枚、「あなたの負け」のカードが40枚だとする。
あなたは、この賭けにのりますか? (佐藤 駿)

 

「若い日の母の香り」

初めて母を強く意識したのは3,4歳の頃だったろうか。その時はもう私の下に乳飲み子の弟が生まれていた。それまで私の母だったのが、弟が出来たことでその存在は遠いものになった。母は弟の世話で大忙しで私の事などどこかに忘れてしまったように思えた。私は、とても淋しさを感じ、弟のおしめを替えている母に、そして弟に授乳する母にまとわり付き、関心を私の方に向けようとしてよく叱られた。昼寝は川の字になり、弟と私の間に母が寝た。私は母がそばに居る事で安心して寝た。その時若い母の香ばしさと温かさを肌で感じた。

小学校時代の運動会は、母の楽しみの一つだった。朝早くから弁当を作り、ゴール近くに場所を取り、私のゴールを待っていた。3年生の時、百メートル徒競走で1位でゴールした。とたんにゴールした弾みで転び、顔にすり傷をつけ、眼に土埃が入ってしまった。母は人目をはばからず、私の眼に溢れるばかりのお乳を入れてくれた。炎天下の出来事で甘酸っぱい香りの中で、母の愛情を強く感じた。

中学3年になり、高校受験を控え、私は夜遅くまで頑張っていた。ある夜、母は風呂上がりの白い割烹着姿で温かい飲み物と夜食を作ってくれた。縫物をしながら寝ずに傍にいてくれた。その白い割烹着姿がとても印象的で、風呂上がりの母の清々しい香りが今でも忘れられない。母のお陰で無事高校受験に合格出来た。

私は母の香りを通して、子供の頃の想い出を今でもなつかしく思い出す。母は我が家の太陽だった。とても明るく元気が自慢の母は父亡き後、6人の子供を育て98歳で天寿を全うした。

“もう一度会いたい母の風に恋う” (浜 正吉)

 

黄門様からの脳活問題

この写真は徳川光圀公が寄進された、と伝わる龍安寺のつくばいです。写真中央の四角い穴を「口」と読むと、東西南北に彫られた文字は何でしょうか? そうです!吾唯知足 でご名答!『われ、ただ足るを知る』「不満に思わず満足する心を持ちなさい」という意味が込められているのだとか。はて、現状よりもっともっと、進むばかりがいい事ではないのでしょうか?自問自答すれども迷答ばかり。ご名答を通信に投稿お願いします。 (キョゥコ)

絵手紙


(大西 孝子)

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