NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人
先日、日野原重明先生の訃報に接しました。105歳という天寿を全うされましたが、100歳をすぎても現役の医師を続け、高齢者が活躍できる社会のあり方などについて提言を続けて、シニア世代に多くの勇気と感動を与えてくれました。私は、だいぶ以前に何かの学会で日野原先生を見かけたことがあります。かくしゃくとしてオーラが感じられました。姿勢がとてもよい方でした。
平成13年には「生き方上手」という本を上梓されました。御年89歳の著書です。この本は、人が自らの人生をどう生きていくのが幸福につながるのか、などをやさしい文章で綴っているのですが、今、改めて読み返すと、現在の高齢者医療・福祉の目指すべき方向が明確に示されています。たとえば「寄り添って生きる」という考え方は、現在の認知症ケアの基本ともなっていますし、「治す医療から癒す医療へ」というとらえ方は、まさに現在の高齢者医療のあり方の転換点ともなっている標語でもあります。
よく知られている日野原先生の功績として、「成人病」の名称を「習慣病」に改めるよう提唱し、「生活習慣病」という言葉が定着しました。高血圧や脂質異常症、糖尿病などの予防は生活習慣の改善が不可欠として、予防医療を進めたのです。
日野原先生の名言に「鳥は飛び方を変えることは出来ない。動物は這い方、走り方を変えることは出来ない。しかし、人間は生き方を変えることが出来る」というものがあります。生活習慣は変えられるという意味も含んでいるのでしょうが、より大きな視点で、自分という人生を悔いのない充実した生き方としよう、それは心の持ち方一つで手に入れることができるのだ、というメッセージが込められていると感じます。
シーズネットの会員の皆さんもそのような気持ちが強いのではないでしょうか。
日野原先生のように、常に前向きで毎日が新しい出来事と感じ、チャレンジする、そんな人生を送りたいものです。先生曰く「人生の中年は50代から始まる」そうですから。
また、現役のケアマネジャーである私としては、先生の次の言葉も耳に痛いものです。「老人のケアは苦労も多い。しかし、いつの日かあなたも、あなたが老人にしたようなやり方で、ケアされる日が必ず来るのである」。
そうなんだよなあ、と思いつつ、日野原先生のご冥福をお祈りします。