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2月 01

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介護サービスを上手に受ける

NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人

2025年がスタートしました。今年は巳年ですので、シーズネットも次のステージに脱皮する時期と受け止めていますが、公共料金や諸物価の値上がりなど厳しさを増す経営状況の中で、一層の知恵を絞らねばと思っています(無い知恵絞れるかなあ……)。

さて、前回、介護保険の現状をお話ししましたが、最大の課題はやはり人材確保です。外国人の担い手が増えてきているといっても、2023年度で約4万人、介護職員総数213万人の1.9%に過ぎません。そして、厚労省が先日発表した統計では、介護職員総数が2022年度の215.4万人に比べて2023年度はなんと212.6万人と2.8万人も減少したのです。都道府県が介護保険事業計画を基に推計した資料では、2026年(来年)には240万人の介護職員が必要といわれていますが、かなり難しい状況になっています。ここは若者が介護業界に就職したいと思わせるような政策が必要です(なんといっても賃金アップ)。

厚労省はその対策として、(1)介護現場のDX(デジタルトランスフォーメーション→IT技術を駆使して記録の作成とか現場での連携などの業務効率化を図ること)と、(2)ロボットの運用拡大(鉄腕アトムのようなロボットではありません。様々な種類がありますが、見守り機器とか排泄や移動のセンサーとか移乗支援の機器とか、介護職員の働きが楽になるようなものです)と、(3)介護以外の仕事(ベッドメイク、車いすの清掃、物品の補充など従来介護職員が担っていた業務)への助手の活用などを提案しています。(3)に関しては、定年退職や子育てが終わったシニア世代の活用を期待しています。賃金アップにつながる施策では処遇改善手当など打ち出していますが、とても他の職業のアップに追い付く内容ではありません(涙)。

私としては、厚労省の意図とは別に、シニアが支援するというのはとても有効なことと考えています。8年前からシーズネットが始めた傾聴ボランティアは、まさにそうした取り組みです(コロナ禍以降活動していませんが)。シニアが高齢者向け住宅に入ると、今まで住んできた地域の関係性から切り離されるので、話し相手がいなくなるのです。他にも趣味活動の相手(囲碁・将棋・麻雀とかカラオケなど)の活動も期待されているので、そのようなボランティアを増やしたいところです。また、そういうボランティアをすると、施設や高齢者向け住まいの実情、そして介護職員の現状が良くわかります。いずれは我が事として受け止める批評の目が養われますので、傾聴ボランティアを再開するときにはぜひご参加ください。

このようにこれから大変になる介護サービスですが、誰もが自分が要介護になった時には気持ちよく介護を受けたいですよね。サービスをうまく利用しながら人間らしく暮らせるようにするための極意は、サービスを提供する人との人間関係(コミュニケーション)を良いものにすることです。すなわち、「支えられ上手」になることです。サービスを提供する側とより良いコミュニケーションを築くことで、サービスのホスピタリティは間違いなく向上します。皆さんがそうであるように、ヘルパーさんなど介護職員も「ありがとう」といわれることが彼らのやりがいなのです。どうかこのことを心にとめておいてください。カスタマーハラスメントで貴重な介護職員が退職する例はとても多いのですから。 

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