NPO法人シーズネット理事長 奥田 龍人
7月13日に札幌市コンベンションセンターで開催された第39回日本老年精神医学会(大会長は砂川市立病院の内海久美子先生)の市民公開講座に招かれ、第1部の「道民による道民のためのボランティア活動」に登壇しました。滝川市のボランティア団体「ぽっけ」と学生団体WACCO、そしてシーズネットの活動発表でした。
「ぽっけ」の活動は認知症の方などのタクシーでの受診同行サービスの発表で、結構ニーズがあるけどボランティアが足りない状況であると発表しておりました。このサービスは、タクシーを使うので福祉有償運送のように自家用車を登録することなくできるという面で、シーズネットでも取組めそうなサービスかとも思いました。WACCOの高木さん(北大医学部3年生)は、団体が行っている高齢者の困りごとへの対応や自らが世界を回って触れ合った世界各地の高齢者の状況などを発表し、若者がこういう取組を行っているということに会場から激励の拍手をいただいておりました。私はシーズネットの活動と全道各地のボランティア団体の活動を紹介し、アクティブシニアが担う意義と認知症になっても暮らしやすい地域づくりのヒントなどを発表してきました。
第2部では、若年性認知症の当事者の方2名が登壇し、自らの経験や毎日の暮らしの工夫、支えてくれる家族や仲間との関係などお話ししていただき、目からうろこのような気付きがいっぱいあり、大変感動しました(一人は丹野さんといいまして話題になった映画「オレンジ・ランプ」の主人公のモデルであります。今後、この映画の上映会なども企画したいとも思います)。
日本老年精神医学会に集う先生たちが主に取り組んでいるのは、認知症の診断、治療などですが、認知症の方の課題は日常生活が上手く立ち行かなくなることですから、毎日の生活をどう支えるかという医学的アプローチを超えた社会資源、地域づくりも求められます。そのような観点からの市民公開講座のテーマだったかと思いました。
昨年6月に認知症基本法が成立し、今年の1月に施行されました。この法の正式名称は「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」となっていて、認知症の人々が尊厳をもって暮らせる社会を目指すということを掲げた法律となっています。実は、法ができる前の与党案では「認知症予防」を先に位置付けていましたが、「認知症になっても安心して暮らせる地域社会づくり」を前面に押し出さないと、今認知症になっている方を護る法律にはならないという当事者や関係団体の反発もあり、「共生社会の実現」がメインになったという経緯があります。
むろん、法律ができたことで認知症に関する課題が解決するわけではありませんが、自治体などには法に則った行動が求められることになりました。とはいえ、自治体だけの取組ではなく、私たち皆が、真剣に認知症と向き合うことが求められるようになったといえるでしょう。
私たちシニアにとっては、やはり「予防」も大事かと思いますし、また自分が認知症になっても暮らしやすい社会づくりを目指すことも大切かと思います。そのようなことを勉強するために、今年も「これからの暮らしのアドバイス」を全5回シリーズで開催します。各界の専門家の方にこれからの暮らしのヒントを語っていただきます。初回は8月21日(水)10時半からエルプラザで行います。皆様のご参加をお待ちしております。(詳細はチラシ参照)